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猫の肥大型心筋症|早期発見と適切なケアが愛猫の命を救う!高齢猫でも治療可能
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布を中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」です。
中高齢の猫でよく見られる病気の一つが心筋症です。心筋症の中でも特に、肥大型心筋症というタイプがもっとも多く見られます。
この病気は、さまざまな理由から心室の壁をつくる筋肉(心筋)が肥大することで心拡大を起こし、また全身の血液の巡りが悪くなります。肥大が悪化すると動脈血栓塞栓症や心不全といった問題に発展する危険性がありますが、早期に発見することで血栓症の予防や入院を防げる可能性があります。そのため、早期発見・早期治療がカギになります。
今回は猫の心筋症、特に肥大型心筋症について、その原因や症状だけでなく、診断・治療方法も含めて解説します。
■目次
1.主な原因
2.症状と病気の進行
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法と日常のケア
6.猫の心臓肥大と生活の質
7.まとめ
主な原因
猫の肥大型心筋症は、以下が主な原因といわれています。
<特発性>
肥大型心筋症は特発性と二次性の2つに分類されますが、多くは特発性(原因不明)です。
<遺伝>
肥大型心筋症は中高齢の純血種猫に多いことから、遺伝の関与が疑われています。しかし、若齢でも発症することがあり、また純血種猫に限らず、ミックス猫でも多く認められます。
<高血圧>
中高齢の猫では、慢性腎臓病を発症するケースが多いことが知られています。腎臓の機能が低下すると高血圧を招く場合があり、心臓に過度な負担がかかることで心臓肥大につながります。
<甲状腺機能亢進症>
甲状腺機能亢進症によって甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されると、心拍数や心筋の収縮の増加につながり、結果的に心臓肥大を引き起こします。
症状と病気の進行
心臓肥大の症状は進行度合いによっても違ってきます。
<初期の症状>
・食欲が落ちる
・呼吸が速くなる
・動きたがらない
・遊びを嫌がる
しかし、初期には症状が現れないことも多いです。
<進行した場合の症状>
・呼吸が早くなる、口を開けて苦しそうな様子で呼吸する
・突然倒れて動けなくなる、失神する
・後ろ足が冷たくなって動かなくなる
症状が進行すると命に関わる可能性があるため、早期発見・早期治療がとても重要です。
診断方法
猫の心筋症は、以下の検査結果を総合的に判断することで診断します。
<聴診>
不整脈や心雑音が確認できる場合がありますが、これらの異常が現れないケースもあるため、聴診だけでは判断できません。
<血液検査>
血液検査で心臓のバイオマーカーを測定することができます。数値が高い場合には心臓に異常がある可能性があるため、検査をお勧めします。
<レントゲン>
心臓の大きさや形、肺の状態を確認します。ただしレントゲンだけでは、心臓の中の細かい状態はわかりません。
<エコー検査>
心臓の大きさや動き、心筋の厚みを観察します。特に心筋の厚みは診断に直接つながるため、慎重に測定します。猫の心臓肥大を診断するうえで、最も重要な検査と考えられています。
治療方法
肥大型心筋症の治療方法は、症状の有無や心臓の状態によって異なります。
<心臓肥大はあるが、症状や心拡大がない場合>
高血圧や甲状腺ホルモンの異常など、心臓肥大を引き起こす基礎疾患の探索が重要です。それ以外では、
これといった治療は推奨されない場合が多いです。そのため、定期的な健康診断で、心臓の状態をチェックすることをお勧めします。
<心臓肥大があり、症状や心拡大もある場合>
血栓を予防する薬や不整脈の治療薬を使用することがあります。
<心不全や動脈血栓塞栓症の症状が見られる場合>
利尿薬や心不全の治療薬を使用することがあります。緊急の対応が求められるので、基本的には入院をして管理する必要があります。
予防法と日常のケア
肥大型心筋症は初期には症状に気が付きにくいため、定期的な健康診断がポイントになります。また、適切な食事管理によって栄養バランスを保ち、肥満を防止することも重要です。心臓に負担をかけないように、1日に与えるフードの量を守り、室内での適度な運動も取り入れるとよいでしょう。
また、ストレスにより心不全を発症してしまう場合もあるため、暮らしやすい環境を整えることも大切です。猫は特にこだわりが強い動物ですので、おもちゃや爪とぎ、エサ・水の容器などはいろいろ試してみて、好みに合うものを探してみましょう。
猫の心臓肥大と生活の質
猫の肥大型心筋症は完治が難しい病気ですが、適切な治療と管理によって良好なQOL(生活の質)を長く維持することができます。そのためには、飼い主様のサポートが欠かせません。獣医師の指示に沿った投薬はもちろんのこと、さきほどご説明した日常のケアや、定期的な受診による健康状態のチェックなどを行うことが大切です。
まとめ
肥大型心筋症は中高齢の猫でよく見られる病気です。初期症状はわかりにくいので、定期的な健康診断が早期発見のカギになります。重症化する前に治療を始められれば、猫の体に負担をかけることなくQOLを保つことができます。
また、健康を維持するうえでは日常のケアも大切になるので、今回ご紹介したような内容をご家庭で試してみてはいかがでしょうか。
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」では定期健診に力を入れており、病気の予防と長期健康維持のお手伝いをしております。
<参考文献>
ACVIM consensus statement guidelines for the classification, diagnosis, and management of cardiomyopathies in cats - PMC (nih.gov)