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犬の皮膚型リンパ腫について|早期発見・早期治療が大切
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布を中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」です。
犬が頻繁にかゆがる様子が見られる場合、アレルギー性皮膚炎や皮膚の感染症が多いですが、まれに腫瘍が原因になっていることがあります。
皮膚型リンパ腫はその名の通り、皮膚に病変をつくる悪性腫瘍(がん)です。一見すると腫瘍とはわからないことが特徴的で、発見が遅れると亡くなってしまう場合もあります。
今回は犬に発生する皮膚型リンパ腫について、その症状とともに、診断方法や治療方法、ご家庭での注意点などをご紹介します。
■目次
1.リンパ腫とは
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
リンパ腫とは
リンパ腫とは、リンパ球という免疫に関係する細胞が腫瘍化することで起こる悪性腫瘍です。以下の型が存在します。
<多中心型>
全身のリンパ節が腫れるため、脇の下や首元などに固くてゴロゴロとしたものをさわることができます。犬ではこの型がよく見られます。
<消化器型>
小腸などの消化器に腫瘍ができるため、下痢などの消化器症状が現れます。
<前縦隔型>
胸に大きな腫瘍の塊ができます。
<皮膚型>
皮膚や皮膚粘膜移行部、粘膜にさまざまな病変をつくります。
これらのリンパ腫のなかでも、皮膚型リンパ腫はリンパ腫全体の3~8%を占め、中高齢の犬に多く発生します。
症状
皮膚型リンパ腫では全身の皮膚に症状が見られます。具体的には以下です。
・かゆみ
・赤み
・痂皮(かさぶた)
・出血
・脱毛
・赤い斑点
・潰瘍
・フケ(落屑)
・色素脱 など
同じような症状が他の皮膚の病気(アレルギー性皮膚炎、ノミやダニの寄生、カビによる皮膚炎など)でも現れるため、症状だけで皮膚型リンパ腫と判断することはできません。
診断方法
皮膚型リンパ腫では皮膚病変を一部採って(皮膚生検)、その組織を観察します。組織中には腫瘍化したリンパ球がたくさん集まっている様子が確認できます。また、リンパ節に針を刺して、その中の細胞の状態も確認します。
その他に、血液検査や画像検査を併用して全身の健康状態をチェックします。
治療方法
治療を始める前に、皮膚病変の種類やその部位、数、大きさを記録し、画像検査を組み合わせて腫瘍の広がりを把握します。皮膚リンパ腫の転移部位としては、以下が報告されています。
・リンパ節
・脾臓
・肝臓
・肺
・気管
・心臓
・腎臓
・胃
・膀胱
・前立腺 など
病変が限定された部位にある場合、放射線療法や手術などの局所療法も考えられます。
しかし、犬の皮膚型リンパ腫は基本的には全身に現れる疾患であるため、化学療法(抗がん剤治療)が選択されます。
薬剤の種類や投与の間隔に関しては、現在でもさまざまな研究が行われていますが、皮膚型リンパ腫にはロムスチン(CCNU)が効くとされています。それ以外にも、免疫抑制剤や放射線治療を補助的に併用することがあります。
ロムスチンは骨髄や肝臓に悪影響を及ぼすことがあるため、治療中はこまめに血液検査を実施して、健康状態を確認する必要があります。
予防法やご家庭での注意点
皮膚型リンパ腫は発症原因が特定できない場合が多いため、予防は難しい病気です。そのため、ご家庭では二次感染を防ぐ目的で皮膚や被毛を清潔に保つとともに、十分な栄養(食事)を与えることが重要になります。
リンパ腫では食欲が落ちてしまうことが多々あるため、以下の対策を行うと有効です。
・普段のフードをふやかす
・食欲をそそるようなパウダーをかける
・栄養価の高いリキッドタイプの食事に切り替える など
また、ロムスチンは口から投与する薬であるため、ご家庭で服薬する際には、獣医師から指示された量を確実に飲み込んでいるかを毎回確認しましょう。
まとめ
皮膚型リンパ腫は、かゆみや脱毛を引き起こす悪性腫瘍です。その他の病気による皮膚炎と間違えられることが多いため、今回ご紹介したような症状が長引くようであれば、早めに動物病院を受診しましょう。
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」では定期健診に力を入れており、病気の予防と長期健康維持のお手伝いをさせていただきます。
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